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ラリヴィーのエレクトリック・ギター JEAN LARRIVEE氏

 ラリヴィーは、日本ではアコースティック・ギターのブランドのイメージが強い。しかし、ヨーロッパを中心にラリヴィーのエレクトリック・ギターは人気がある。先日、エレクトリック・ギターのプロモーションのためにジャン・ラリヴィー氏が来日。今回はラリヴィーのエレクトリック・ギターについて話を訊いた。

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▲JEAN LARRIVEE
(LARRIVEE General Manager)

 2008年のNAMMショウでエレクトリック1というエレクトリック・ソリッド・モデルを発表していますが、それが最初のエレクトリック・ギターですか?
 いいえ、最初にエレクトリック・ギターを製作したのは1983年です。それは現在のRS-4に似たデザインで、一緒に5弦や6弦ベースも発売していました。アメリカよりもヨーロッパやスカンジナビア、カナダなどで主に販売していたんです。それらのモデルは、トータル2万本近く生産しました。ヨーロッパのジョン・ノーラムやブライアン・アダムスも使っていましたよ。

 それは知りませんでした…。
 まあ、日本には全く入っていませんからね。アメリカでも少量で、メインはヨーロッパです。その後しばらくの間エレクトリックの生産を中止していたんですが、2008年からまた生産を再開したわけです。

 ソリッド・ギターもジャンさんのデザインですか?
 私とカリフォルニア工場を仕切っている次男のマシュー・ラリヴィー、それからアッセンブリ関連はマシューを含めたスタッフで開発しています。私はこれまで多くのエレクトリック・モデルを製作/販売した実績もありますし、アコースティックだけではなく、エレクトリックもかなり研究しています。木部の加工はもちろん、ピックアップもすべてカリフォルニアの工場で作っています。

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▲左/RS-2 Single P-90 価格=110,250円

▲右/RS-2 Dual P-90 価格=120,750円

 

 RS-2はかなりトラディショナルなデザインを採用していますね。
 確かに一見はトラディショナルに見えますが、実はボディ・シェイプは、ラリヴィーのLVというアコースティック・モデルをサイズダウンしたものです。

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▲RS-2(左)とアコースティックのLV(右)。アウトラインが酷似している

 

 RS-2の特徴は?
 ボディとヘッドストックのシェイプ、ネック・シェイプもラリヴィーならではのものです。スケールは25.5インチを採用しています。

 シングルカッタウェイで25.5インチにした理由は?
 充分なサステインを得るためです。このスケールはヴァイオリンを2倍にしたもので、フェンダーやラリヴィーなど、世界中のメーカーが使用しています。より良いサウンドとより良いサステインが得られますからね。そして、最も重要なのがピックアップでしょう。このピックアップはスペシャルなものとして作っています。

 外観がギブソンと似ていますが、その特徴は?
 このピックアップは、最高の音を得るためにあえてワックスのポッティングをしていません。

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▲RS-2のピックアップ

 そうするとトーンはどうなりますか?
 良い質問ですね。しかし、トーンはひとつの理由だけで作られるわけではありません。いろいろな条件を複合して、そのトーンができあがるわけです。コイルやポールピース、ボビン、カバーなど、すべてのパーツが音に影響しています。我々は最高の音を得るためのそれらのコンビネーションを長年研究してきました。ワインディング・マシンは今回のために古いものを探しました。このマシンは63年製で、ギブソンがPAFハムバッカーを作ったマシンと同じブランドの同じモデルです。近代的な機械を使えばもっと早く巻けますが、この63年製のマシンがスペシャルな音を作るためには必要です。現在は3台のマシンをフル稼働させています。レギュラー・ハムバッカーやミニハムバッカー、シングルコイル、P90タイプなどいろいろなピックアップを自社で作っています。

 ネックはサウスアメリカン・マホガニー。ボディは1ピースのアフリカン・マホガニーかサウスアメリカン・マホガニー。最近はサウスアメリカン・マホガニーを輸入するのが難しくなっていて、特にギターに使うような大きなものは非常に難しくなりました。

 1ピース・ボディであることは音に関係しますか?
 自分はそう考えるので、1ピース材にこだわっています。ローズウッド・フィンガーボードにはエボニー・バインディングを施しました。エボニー・フィンガーボードだとブライトになり過ぎるので、あえてローズウッドにしています。逆にアコースティックはすべてエボニー・フインガーボードです。

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▲RS-2のヘッド部。バインディングはエボニー。

 RS-2は、どんなユーザーを対象に企画されましたか?
 若者にも買える価格帯というのがRS-2のひとつのコンセプトです。安くて良いサウンドであれば、いろいろなジャンルで使ってもらえますからね。

 開発は歪んだトーンをイメージして行われるのですか? それともクリアなトーンを?
 クリアなトーンですが、特にサステインは重要です。そこでネックエンドをピックアップ・キャビティーの下までネックをもってくる仕様を採用しています。

 ギターを手にすると、とても丁寧に作られていることがよく分かりますね。
 ありがとうございます。ボディのコンター加工を施したのも1つの特徴です。その他にも細かいところまで数々のオリジナル仕様を施しているので、多くギタリストに満足していただけると思いますよ。

 RS-2はUV塗装ですか?
 基礎はUVで、トップコートはポリウレタンのサテン・フィニッシュにしています。

 塗装がかなり薄いですね…。
 ええ、凄く薄いです。木の鳴りを重要視していますからね。今ここにあるモデルはP90ピックアップを1基搭載したモデルと2基搭載したモデルですが、この他にもブリッジ側にハムバッカー、ネック側にP90を搭載したモデルもあります。一番人気があるのはP90を2基搭載したモデルです。ロックンロールでラウドな音を出したい人には、1シングルのモデルが好まれます。ワックス漬けしたピックアップよりもフィードバックしやすいので、ロックンロール・タイプのギタリストには最適でしょう。

 エレクトリック・モデルを製作するにあたって最も難しい点は?
 ピックアップの開発ですね。我々の製作するピックアップは、ボビンに現在入手不可能なプラスティック素材を使うなど、とてもプレミアム度が高いものです。我々は、ポールピースやその他すべてのパーツや素材がどこでどのように作られているかを2年間徹底的に調査してきました。ピックアップ作りにおいて実はボビンの素材がとても重要だということに多くの人は気づいていません。我々は50年代のサウンドを目指してギターをデザインしているのですが、近年はどんどんそういった昔の素材を入手することが難しくなり、マスプロダクションのピックアップではあまり使えなくなってきています。しかし、我々はそこにこだわりを持っています。83年にエレクトリック・ギターを初めて作ったときも自分でピックアップを作りましたが、当時はまだそういったスペシャルな素材は使えなかったので、一般的な素材で作りました。そして近年次男がエレクトリック・ギター作りをやり直すタイミングで、2年間かけて他社はどんなマグネットを使っていたか、どんなプラスティックを使っていたかなどをすべて調査し、やっとスペシャルなピックアップを作ることができました。

 スイッチ等に関しても非常にスペシャルなパーツで、なかなか簡単に手に入るものではないです。幸運だったのが、ロシアでキャパシターを見つけられたことでしょう。長い間使えるように、大量に入手しました。

 エレクトリック・ギターを製作するにあたり、アコースティックのトップクラスのブランドとして何かメリットはありますか?
 我々は昔からエレクトリック・ギターを作っていますし、マンドリンやヴァイオリンも作れます。ギブソンもそうですが、特にエレクトリック・ギターを作る上でこれが役立ったというより、元々何でも作れたので特別なことはないと思います。

 最後に、今後のエレクトリック・モデルの製作に関する展望を教えてください。
 来年の冬か夏のNAMMショウでエレクトリック・ベースを発表したいと考えていて、今準備をしているところです。それもぜひ注目してください。

 我々の工場があるカリフォルニアは、エレクトリック・ギターを作るのに非常に良い場所と言えます。フェンダーもカリフォルニアから生まれましたし、そういった歴史がある特別な場所です。言わばカリフォルニアは、ギターの聖地とも言えるでしょう。私たちはこのカリフォルニアで、日本の人々にも愛されるギターを作り続けて行きたいと考えています。

 

 

本稿は月刊『Player』2012年10月号「Behind The Scenes」にテキストを加筆、写真を追加したものです。

(2012年9月1日)

 

            

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