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JEORGE TRIPPS/JIM DUNLOP社 開発責任者

エフェクター・デザインのカリスマがジム・ダンロップ社の最新事情を語る

 ジョージ・トリップスは、現代のエフェクター開発においてカリスマ的な存在と言われている。それは90年代初めに自らが開発製造したエフェクター・ブランドのウェイ・ヒュ−ジが多くのミュージシャンに愛用され、続いてライン 6社でも様々なペダルの開発に携わった。そして、数年前にジム・ダンロップ社に入社し、かつての自身のブランドであるウェイ・ヒュージを復活させた。今はジム・ダンロップの開発責任者となり、同社のエフェクター全般を指揮し、指示する立場にある。そんな彼に同社の近年の製品について話を聞いた。
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ジョージ・トリップス

 あなたが音楽やエレクトロニクスに興味を持った頃のことやきっかけなどについて簡単に教えて下さい。

 ギターを始めたきっかけは13歳の頃、家族がギターを持っていて、そのギターを小さなアンプに繋げて弾いていたのが始まりかな。ハリウッドに住んでいて、音楽やショービジネスが身近にたくさんあるだろう?そこで色々を音楽のことやエフェクターのことを勉強したんだ。それに父がエンジニアだったこともあって、元々、エレクトロニクスについては多少の知識があった。
 
 ウェイ・ヒュージは90年代初めのエフェクターの中でもトゥルー・バイパスやアルミケース、LEDインジケーターを使用した先駆けだと思います。当時それらの先進的な仕様を組み込もうとした背景は?
 
 ウェイ・ヒュージよりも前にはミュージシャンから依頼されてラックにエフェクターを組み込み、足元のスイッチなどを作る仕事をしていたんだ。だから、僕にとっては当時でもトゥルー・バイパスやアルミのケースに収納することや、LEDのインジケーターを取り付けること、そしてアルミのケースを使うことなどはすごく自然なことだった。
 
 続いてライン6社に入社しますが、そこではどのようなエフェクターを開発しましたか?
 
 ライン6社では、フットスイッチが4つ付いているタイプの製品は僕が開発したものだよ。またトーン・コアなどもそうだな。
 
 ライン6社を退社し、ジム・ダンロップ社に入った経緯について教えて下さい。
 
 縁があったからさ(笑)。むしろ僕は元々ファズ・フェイスやクライベイビーなどが大好きだったし、そういうエフェクターを作れるをすごく光栄に思っている。
 
 ジム・ダンロップ社でのあなたの現在の役割は?
 
 開発に関わることの多くに携わっている。それはどんなエフェクターを作るのか、どんなパーツを使うのかなど、非常に幅広いことが僕の仕事だ。ただ、ジム・ダンロップではエフェクターはチームで開発している。今では僕自身は回路図を書いたりはしないんだけど、この部分にはこのパーツを使おう、などといった指示をすることは多いね。
 
 あなた一人で最初から最後まで開発したモデルはありますか?
 
 最近では無いな。
 
 あなたのハンドメイド時代のエフェクターはオークションなどで高価で取引されています。ジム・ダンロップ社に入って新たに作られたウェイ・ヒュージとの違いは?
 
 以前のウェイ・ヒュージは全部で3,000台ぐらいあるはずなんだけど、ミュージシャンからの注文で作ったワンオフ・モデルなどもかなりあるから、製品として販売されたものは2,500台ぐらいだと思う。ただ、その頃からだいぶ時間が経っていて僕自身も経験を積んでいる。その意味では、今、僕が開発しているニュー・モデルの方が、より良い製品であると思っている。
 
 ウェイ・ヒュージのようなエフェクターは、ハンドメイドよりもジム・ダンロップ社のように量産できるメーカーにしかできないメリットも大きいと思うのですが?
 
 エフェクターの場合、ハンドメイドと量産を比べると、大きな会社で量産モデルを作る方が製造面でメリットもあると思うよ。ただ、ジム・ダンロップはそれほど大きなメーカーではないので、それほど大量に生産はしていないから、コストダウンのメリットはあまり大きくないね。
 
 最近の製品についてお伺いしたいのですが、MXRのM169 カーボンディレイは、意外にもMXR初のアナログ・ディレイですね?
 
 すごい昔にはアナログ・ディレイはラインナップにあった。が、現在はアナログ・ディレイがなかったから企画したんだ。ジム・ダンロップはアナログの製品が多いからね。
 
 このモデルではBBD素子を使用したモデルですが、ディレイ・タイムが600msと長いですね。
 
 残念だが、その部分の開発は僕ではない。実はボブ・セドロが開発した部分だ。彼はロックマンから来たスタッフなんだ。
 
 すごい人材が揃っていますね。続いてジョー・ボナマッサやエリック・ジョンソンなどのアーティスト・モデルについて教えて下さい。まずアーティスト・リレーションはどのように行うのでしょうか?
 
 まずは、来る日も来る日も彼らのライブに通うことだよ。それで彼らと仲良くなり、彼らのリクエストがどのようなものかを聞き出すことから始まる。まず、ジョー・ボナマッサについては、どのようなサウンドを求めているか、というのが非常に分かりやすかったから製品もすごく作りやすかったな。逆にエリック・ジョンソンの場合、OKが出るまで非常に時間がかかった。彼からはすごく細かいニュアンスにも注文が入ったからね。
 
 最新モデルのファズ・フェイス・ミニはどのようなモデルですか?
 
 まず、ご覧のようにサイズを小さくすることからスタートしたので、その部分にすごく苦労した。ノブや筐体などは新しいものを使ったし、質感にもこだわったつもりだ。それにノブをはじめとして、筐体の上に出ているパーツも多いから、その取付方法などにも気を配った。
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 FFM1(Fuzz Face Mini Silicon)は、シリコンのトランジスタを使ったモデルで、これはいかにもファズといった荒々しい音が特徴だ。
 
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 FFM2(Fuzz Face Mini Germanium)は、トランジスタにゲルマニウムを使ったモデル。同じファズといってもシリコンと違って、ややマイルドなニュアンスになるのが特徴なんだ。
 
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 FFM3(Fuzz Face Mini Hendrix)は、ジミ・ヘンドリックスという名前こそついているけれど、サウンド面から言うとFFM1とFFM2の中間のサウンドが特徴のファズと言える。この3つの中から好みのサウンドを選んでほしい。
 
 最近では様々なメーカーから真空管を内蔵したエフェクターが増えています。ジム・ダンロップではトランジスタなどを採用したエフェクターが主流のようですが、真空管内蔵エフェクターについてどのように考えていますか?
 
 これは真空管内蔵の製品を作る、作らないの話ではなく聞いてほしいのだけど、エフェクターの中に真空管を入れるということについては、温度やサイズなど解決しなくてはならない様々な問題があることがひとつ。そして、真空管はアンプなどのパワーの面では効果的だと思うのだけど、今のところエフェクター用としては、それほど効果的だとは考えられないんだ。それよりも、現在作っている製品をより良いものにすることの方が、今は大事なことだと考えている。
 
 いわゆる飛び道具的なエフェクターを作りたいといった考えはありますか?
 
 モジュレーションなどで変わった動作をするエフェクターはウェイ・ヒュージが得意とする製品だ。それらについてはこれからも、もちろんトライしてゆくよ。
 
本稿は月刊『Player』2014年1月号「Behind The Scene」にテキストを加筆、写真を追加したものです。
 
            

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